Shadows ~影色妖精絵本~|葉月ゆら【感想・レビュー】 | すこれるブログ(仮)

Shadows ~影色妖精絵本~|葉月ゆら【感想・レビュー】

音楽レビュー

※サムネイル画像出典元:https://booth.pm/ja/items/374928?srsltid=AfmBOor9qKSEu4WAgjWiAa4-jlRgDACLuArgJeNdXEllKrk1buad9fUm

私は音楽が好きで、日ごろから色んな曲をディグしているのですが、たまたま聴いた葉月ゆらさんのアルバム『影色妖精絵本』の表題曲「Shadows ~影色妖精絵本~」にすっかり虜になってしまいました。

もともとDTMをしていたり、学生時代には約30バンド・200曲ほどをコピーしていた経験もあるので、その知識を少しでも活かしてみたいと思い、今回初めて音楽レビュー記事に挑戦します。

Google先生的にはゲーム攻略サイト判定になってそうな本ブログで場違いかもしれませんが、読んでくれる聖人さんがいれば良いなと思いながら筆を執ります。

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曲の基本情報

曲名Shadows ~影色妖精絵本~
アルバム名Shadows ~影色妖精絵本~
アーティスト名葉月ゆら
作詞葉月ゆら
作編曲Drop
敬称略
Shadows~影色妖精絵本~(wav音源&歌詞jpg) - 葉月ゆら(hatsukiyura) - BOOTH
★一つの真実が百の方を生み出す★ 僕の血で描いて 此処に記そうグリモワール 誰も知らなくて良い 密かな快楽を 激しく求め乞うは 君の残り香 仄暗い妖精達の物語を綴る ダークメルヒェン楽曲集 1.蠱惑の森 作詞:夕野ヨシミ(IOSYS) 作編...
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曲との出会いと第一印象

たまたま友人とレンタカーで旅行した際、車で流れていた友人のプレイリストに入っていたこの曲が流れたのがきっかけでした。

初めて聴いた時は、やたら耳に残るキャッチーなサビのフレーズと、ポップロックにアイリッシュやケルト風の楽器が調和した独特の雰囲気に衝撃を受けました。

詳しくは後述しますが、後日「自分でも弾いてみたい」と思いコピーしてみたところ、想像以上に緻密で凝った構成をしている曲であることに改めて驚かされました。

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曲の特徴・感想

リズミカルでキャッチーなメロディ

全体を通して主旋律を奏でるティンホイッスルと、伴奏やオブリガートを担うアコーディオン。どちらも非常にキャッチーで、耳から離れないメロディを紡いでいます。

伴奏はAメロやサビで裏打ちを担い、独特の浮遊感を生み出しています。この浮遊感が「普通の世界ではなく、メルヒェンの世界を描いている曲」であることを自然に印象づけています。

葉月ゆらさんの歌声の魅力

さらに語らずにはいられないのが葉月ゆらさんの歌声です。少しウィスパーボイスを含んだ柔らかめな高音域は、「幻想的」「蠱惑的」「儚い」印象を与えます。

ビブラートを多用しないため、まるで絵本の読み聞かせのような優しい響きがあり、聴き手をダークメルヒェンの世界へ誘ってくれます。

その声は、少女のあどけなさと妖精の妖しさを同時に感じさせる、唯一無二の魅力に溢れています。

歌詞の雰囲気や物語性に引き込まれる

アルバム全体で世界観がしっかりと構築されていますが、この曲単体でも十分に物語が伝わってきます。世界観の緻密さは、Sound Horizonや少女病にも通じるものがあります。

「ダークメルヒェン楽曲集」というアルバムコンセプト通り、歌詞は仄暗いおとぎ話そのものです。日常が退屈に感じ、魔法のような非日常に心惹かれる少女が、古い絵本に魅入られてしまい、気づけば後戻り出来なくなる……そんな物語が描かれています。

前述の葉月ゆらさんの声質も相まって、本当に絵本を朗読してもらっているかのような感覚を覚えました。

印象に残ったフレーズ

正直、すべてのフレーズが秀逸としか言いようのない曲です。作詞も手がける葉月ゆらさんの言葉選びのセンスには、本当に驚かされました。

例えば「甘えるように拗ねる」という少女の日常を感じさせる表現から、一気に「欲深く乞え」というフレーズへ。まるで妖精が少女を丸め込み、誘惑しているかのような光景が浮かびます。

さらに1番サビのラスト「駆け回りはしゃいで狂う その名を呼ぶなら意のままに」ここでは、妖精が少女に「快楽という甘い毒」を仕込み始めたことが伝わってきます。

そして2番に入ると、完全に妖精の視点へと切り替わります。
「コノ苦シミ少シ コノ痛ミヲ少シ 誰カノ上ニ 花ノヨウニ飾リタイノ」という、妖精の残酷さを的確に描き出す言葉、さらには「平凡なこの世界など賢い君には似合わない」という、少女には抗いがたい甘言の囁き。

極めつけは「挿絵には踊る少女と邪悪な獣が揺れている」「全てを捕えて意のままに」 このくだりからは、少女がすでに後戻りできなくなったことが強く示唆されています。

まさしくダークメルヒェンな絵本を読んでいるかのようで、今では私自身もこの絵本の虜となってしまいました。

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深堀り分析

転調を多用しつつも「着地感」はしっかり

この曲はなんと3つのキーの転調を繰り返しながら合計で6回も転調が行われています。

これだけ多くの転調があるにも関わらず、不自然さを感じさせないのが大きな特徴です。むしろこの転調が歌詞の世界観に奥行きと深みを持たせる役割を果たしていると感じます。

リフ~Bメロ前半:Eマイナー

リフ〜Bメロ前半は Eマイナー で始まります。
ロックでは定番のキーで聴き手にも耳馴染みがあり、安心感のあるスタートです。

Bメロ途中~サビ前:F#マイナー

Bメロ途中〜サビ前では、EマイナーからF#マイナーへと全音(キーが2つ)上がります。

最近のポップロック系の楽曲でもよく見られる転調パターンですが、この曲では特に効果的に使われています。音階が一気に切り替わることで、雰囲気もガラッと変化し、サビに向かう高揚感を強く演出しています。

サビ:E♭マイナー

サビでは E♭マイナー へ転調します。

直前のF#マイナーから「キーを3度下げる」形になるため、開始キーよりもさらに低くかなり大胆な転調です。

その結果、グッと陰りが増し「堕ちていく」ような感覚が強く表れ、サビ全体のインパクトをより際立たせています。

間奏:Eマイナー

間奏では再び Eマイナー に戻ります。間奏では似たフレーズを2回繰り返しますが、2フレーズ目でしっかりと元のEマイナーへ帰ってきます。

この「キー戻し」によって、サビは浮遊感がありつつも、「元の現実に帰ってきた」かのような安心感が生まれていると感じました。

1番と2番の間でいったん原点へ帰ることで、2番でも同じ転調の流れを繰り返す構成となり、物語の循環性を強調しています。

最後サビ:E♭マイナー⇒Eマイナー

最後のサビでは E♭マイナーからEマイナー へと戻ります。

2番サビ ⇒ 間奏 ⇒ 最後のサビ1回目まではE♭マイナーが続きますが、ラストだけはEマイナーで締めくくられる構成です。

元のキーに帰ることで音楽的にはごく自然で収まりのよい終わり方に感じられます。

しかし歌詞と照らし合わせると、決して安心させてはくれず、むしろ不穏さを残した幕切れとして響いてきます。

この転調が補足する物語性

Aメロからサビにかけて E ⇒ F# ⇒ E♭ と段階的に転調していくことで、まるで「少しずつ異世界へと引き込まれていく」ような感覚が強調されています。

ロックで定番のEマイナーは、耳馴染みの良さと同時に、どこか哀愁を帯びた響きを持っています。そこからF#マイナーで高揚し、E♭マイナーで一気に堕ち、陰りを深める流れは、まさに「現実から非現実へ」と足を踏み入れる物語展開そのものです。

Eマイナーの安定感があるからこそ、その後の転調がより強く際立ち、少女が妖精に誘われて堕ちていくプロセスを音楽で描き出しているように感じられます。

Aメロ(Verse)

少しメタな見方になりますが、ポップロックなどで耳慣れた Eマイナー を基調にすることで、日常的な親しみやすさと同時に、Eマイナーが持つ仄暗さが漂っています。

Eマイナー自体がしっとりとした暗さを持つため、不気味さを醸し出すための導入としてはまさにぴったりだと思います。

さらに伴奏は裏打ちリズムが中心でとてもリズミカルです。そのおかげで不穏さの中にも軽やかさが生まれて、曲全体がダークになり過ぎず、メルヒェンとしての絶妙な雰囲気を形作っています。

Bメロ(Bridge)の途中

歌詞と照らし合わせると、F#へ転調するシーンは「触れたいなら さぁ 欲深く乞え」「可憐な願いを叶えてあげよう」と言った妖精の誘惑の瞬間です。

高揚感を与える歌詞と転調が重なるため、音楽的にも物語的にもピッタリ役割に合った転調だと感じました。

また、転調前のシーンでは歌声や楽器によるオブリガート、さらにベースラインまでもがロングトーン気味になっており、少女が妖精に乗せられて、流されるまま誘惑されていくニュアンスを強く表しています。

サビ(Chorus)

ここでF#マイナーから一気に 3度下げてE♭マイナー、さらにはAメロよりも1度低いキー突き堕とすのは、大胆かつ衝撃的な転調です。

まさに「魔法に呑まれる」「妖精に魅入られる」といったニュアンスを音楽そのもので表現しています。

サビの歌詞も場面が「夜」であることを強調しつつ、劇的かつ残酷さを増していきます。
「黒い光」「はしゃいで狂う」「切り裂いた胸」「夢か幻か惑う夜」── どのフレーズも日常の明るさから一気に突き堕とすかのような強い言葉ばかりです。

音楽的な転調と歌詞の内容が完璧に噛み合うことで、退屈な日常から奈落へ堕ちていく物語が、より鮮烈に浮かび上がっています。

1番~2番の間奏

間奏は似たフレーズを2回繰り返しますが、2回目のフレーズで最初のEマイナーに戻ります。

ここでいったん元のキーに帰ることで、音楽的には「少女と妖精がそれぞれの日常へ戻った」と解釈も出来ます。

しかし、妖精が少女に見せた夢幻のような魔法は、確実に少女を蝕んでいました。
その証左として、2番では再び同じ転調の流れが繰り返されます

少女は妖精の誘惑に抗えず、再び禁断の果実に手を伸ばしてしまった」──そんな物語を暗示しているように感じられます。

2番の間奏~3度目のサビ ⇒ 最後のサビ

2番目のサビから3度目のサビまではE♭マイナーのまま進みますが、ラスサビでついにEマイナーに戻ります。

原点回帰を果たしていますが、Eマイナー本来はAメロのキーです。サビをEマイナーで歌うことにより「日常に帰ってきたはずなのに、もう元には戻れない」というニュアンスを強く浮かび上がらせます。つまり少女はバッドエンド、あるいはそれに近い結末を迎えてしまったのでしょう。

さらに始まりと終わりのキーが同じEマイナーで構成されることで、『影色妖精絵本』という物語は、最後のページを閉じたはずなのに、気づけばまた最初のページを開いている。そんなループ構造と解釈することも出来ます。

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3行まとめ

  • すこポイント:葉月ゆらさんの歌声と作詞センス!歌詞に完璧に呼応する転調
  • 聴きポイント:転調と歌詞を意識して聴くと、まるで「絵本」の世界へと引き込まれるような感覚
  • こんな人に!:ダークなメルヒェンや物語性のある音楽に浸りたい人

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感想を共有して語り合えたり、違った解釈を読ませてもらえるのも嬉しいです。
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